TOPへ 保有車輌紹介 第1の部屋 25ページ 27ページ

「第45回」 中村精密のCタンク・トリオ

中村精密のことは、これまでよく知らなかったが1972年から、近代型タンク機関車C10・C11・C12を続けて発売したので、結果的に当社に「中村のCタンク・トリオ」が揃うことになった。
3台とも未塗装キットの組立であるが、ブラス生地未塗装モデルの当社への導入は、日本型に関してはこの3台が最後となった。

50. C10 蒸気機関車







(実車)
昭和初期には大都市の人口増加工業化の進展により、都市近郊の短距離輸送需要が増加した。
こうした背景のもと、快速旅客列車用として、終端駅で転向の必要のない近代型タンク機関車C10が1930年(昭和5)に開発され東京、名古屋、大阪に配備された。
このような使用目的から、動輪径旅客用貨物用の中間に設定されているが、外観的には除煙板がなく、サイドタンクに沢山並んだリベットが特徴となっている。
又、ボイラーに沿った細長い重見式給水温め器が独特の味をだしている。
当初こそ、大都市近郊でのフレクェントサービスに活躍したC10であったが、総数23輌という少数派でもあり2年遅れで誕生した後継機C11に押されて地方区へ転出、C11より軸重が重いため、入換えの運用で余生を過ごし、1961年(昭和36)までに全機引退したが、民間会社に譲渡された8号機大井川鉄道で動態保存されている。

(模型)
1972年(昭和47)中村精密発売 未塗装KIT組立
中村精密が、初めて機関車を発売したその製品がこのC10であるが、メーカー側の組立工程を省き、価格を安く抑える努力のあとのうかがえる製品である。
その主な点を上げると、メインフレームをダイガスト製にして動軸を固定(軸バネなし)、シリンダーブロックは真鍮鋳物である。(シリンダーブロック側面ディテールの大きすぎるのが惜しい)伝動も、軸バネなしのため、ギヤーボックスもないシンプルなウオーム1段、このためギヤーかみ合調整法は独特である。
こうした施策が走行性能に全く影響していないのが嬉しい。高価「高級品」といわれるモデルの中にも、ギヤーボックスの振動音が気になる機種があるのに、このC10は静かで滑らかに走行する。
「中級品」の評価をうけている中村精密のC10であるが、走らせて楽しむ当社では、コスト・パフォーマンス抜群高性能タンク機である。
それでは0.6Ampで仮設レール上を快走するMovieとそのStillをお目にかけることにする。



51. C11蒸気機関車











(実車)
C10の改良型であるC11都市近郊旅客用快速列車牽引の用途を持っていたのは勿論であるが、更にその奥に大きな時代背景があったのを忘れてはならない。
当時のローカル線には輸入機、国産機を問わず老朽化した、明治生まれの小型タンク機が多数存在していたので、不況対策として、閑散区の合理化のため、近代的タンク機関車の出現が待ち望まれていたのである。
このためC10を更に軽量化し、線路規格の低いローカル線への入線を容易にする努力が払われていた。
この結果C11は、1932年(昭和7)から15年間にわたり400輌近くも製造され、日本を代表するもっともポピュラーなタンクロコに成長してゆくのである。
つまり都市近郊旅客用を振り出しに、北海道から九州まで全国各地のローカル線に進出、旅客用のみならず貨物用、入換用に用途を広げ、明治生まれの前記老朽タンク機を駆していったのである。
外観的にはリベットがなくなり、除煙板がついたのがC10との大きな相違点であるが、全般的に洗練されたそのスタイルは外国の人達からも賞賛された。
本来地味な働きが主体のタンク機C11であるが、その広範な活躍の中には「お召し列車」「ブルートレイン・さくら」牽引という華やかで誇り高い経歴も残されている。
無煙化に追われるのは蒸気機関車の宿命であったが、急速な幹線電化大型蒸機が活躍の場を失うのは早かったが、ローカル線のディーゼル化が全国に普及するには時間も掛かり、C11はおそくまで生き残った幸運な機関車であった。
現在でも、大井川鉄道で3輌、その他3輌合計6輌という多くのC11動態保存されている。

(模型)
1973年(昭和48)中村精密発売 未塗装 KIT組立
前年のC10に引続き、中村精密からC11が発売された。実車のC11も初期型にはC10と同じ円筒状重見式給水温め器がボイラーの上、ドームの両側に装着されていたが、C11141以降の後期型からなくなった。模型はこの後期型を製品化したものである。
C10に続く製品だけに、価格を安くおさえるため、基本的に同じ手法をとっており、この点に関してはC10のところですでに述べているので、追記することは特にない。
走行状況もC10とほぼ同等で、Slow走行の滑らかさではC10を上回っている。
走行MovieStill
ここで中村精密のC10、C11兄弟の当社における特殊な役割について触れておきたい。
それはこの兄弟機関車が、前後両方にベーカー・カプラーを装着している事に関係する。
当社の蒸機の場合、Tender側にベーカー・カプラーをつけていても、フロント側は形を実物の自連に似せたDumyカプラーをつけている場合が殆どである。一方当社には、動力装置を持たないDumy SL3台いる。(C55、C60、次回登場予定のC12)
すでにC55やC60のところで「重連運転やPush運転を楽しむ事にしている」と述べているが、重連相手のSLのフロント側にベーカーカプラーがついていることが必要条件である。そこでC10、C11の出番となるわけであるが、今回は未登場のC12(Dumy)と重連を組んでいるC11走行MovieStillを掲載する。
最後に、このC11が当社の無塗装ブラス生地SLの中で、最も表面の美しい(初走行から30年以上経過しているとはとても思えない)機関車の栄誉を担っていることを付記しておく。


TOPへ 保有車輌紹介 第1の部屋 25ページ 27ページ